前回、「歯みがきの極意7か条」についてご紹介しましたが、これは成人向けの内容でした。
今回は、小学生までのお子さまのケアについてお話しします。

子どもは歯周病には基本的にかかりません。
そのため、歯みがきの主な目的はむし歯を予防することになります。
一方で、大人と同じように「なぜ磨くのか」「何を落とすのか」を理解することは、歯みがきを毎日の習慣にするうえで、とても大切なポイントです。

今回は、成長の段階に合わせた“子どものための歯みがきの極意”を、わかりやすくご紹介します。

① 歯みがきは“毎日の土台”、生活習慣と一緒に整えていくもの

小さなお子さまのむし歯予防には、毎日の歯みがきがとても大切です。
ただ、それだけに頼るのではなく、甘いもののとり方やよく噛んで食べる習慣など、
むし歯になりにくい生活習慣を整えることも大きなポイントになります。
3歳頃までは甘いものを控えること。
そして、食べられるようになったら、やわらかすぎないものをしっかり噛んで食べること。
これだけでも、お口の中は自然ときれいに保たれます。

歯みがきは、そのような毎日の習慣の中で、プラーク（細菌のかたまり）を落とす大切な手段。
「歯を守る生活の一部」として、ぜひ毎日続けていきましょう。

② 何を磨くの？

歯みがきで落としたいのは、プラーク（歯垢）＝細菌のかたまりです。
これは、大人も子供も同じです。
歯と歯の間や、歯ぐきの境目など、見えにくい場所にたまりやすく、そこに残ったプラークがむし歯の原因になります。
とはいえ、細かい技術や時間の長さよりも、まずは「毎日自然に歯ブラシを手に取る」ことができているか、が大切です。

③ 仕上げみがきのコツ

自分で上手に磨けるようになるのは、小学校高学年ごろが目安です。
それまでは、夜1回の仕上げみがきをぜひ続けてください。
見るポイントは「歯と歯の間」「奥歯の溝」など、みがき残しが出やすい場所を中心に。
仕上げみがきの間に、お子さんに手鏡を持たせて“どうやってみがいているか”を見せるのもおすすめです。
「どこを」「どんなふうに」みがいているのかを目で見て覚えることで、将来のセルフケアにつながります。

嫌がる日もありますが、少しでも続けることが大切です。
わからないときや、続け方に迷ったときは、当院スタッフにいつでもご相談ください。
お子さまの性格や発達段階に合わせたみがき方や、親子で楽しく続けるコツを一緒に考えましょう。

④ フッ素は子供の歯の心強い味方

乳歯や生えたばかりの永久歯は、大人の歯よりもずっと弱く、むし歯になりやすいことがわかっています。
そのため、1日2回、フッ素入り歯みがき粉を使った歯みがきが推奨されています。
使う量と濃度の目安は次の通りです：

• 0〜2歳：500ppm（米粒程度）

• 3〜5歳：950ppm（グリーンピース大）

• 6歳以上：1,000〜1,500ppm（大人と同量）

使ったあとは軽く1回だけゆすぐのがポイント。
「しっかりゆすぐ」とフッ素が流れてしまうため、口にとどめておく工夫が大切です。

⑤ 習慣化がすべて

子どもの歯みがきは、「きちんとできているか」よりも、毎日の生活の中に自然に溶け込んでいるかどうかが成功のカギです。
朝と夜、生活の流れの中で自然に歯ブラシを手に取れるようなリズムをつくってあげましょう。
そして、歯みがきが「怒られる時間」「押さえつけられる時間」にならないように、笑顔で終わらせることを意識してください。

自分の手で歯ブラシを動かす経験もとても大切です。
「自分でできた！」という感覚は、セルフケアの芽を育て、将来の自立につながっていきます。

当院では、お子さまご本人に対しても、歯ブラシの持ち方や当て方などの指導を丁寧に行っています。
小さなうちから“自分の歯を自分で守る力”を育てることが大切だと考えているからです。

完璧じゃなくて大丈夫。
“続けること”こそが、一番大切です。

歯みがきは、生活の一部として続けるもの。
ご家庭での習慣づくりと、私たちのサポートを両輪に、
お子さまの健やかな口腔の成長を、一緒に育てていきましょう。