――“むし歯になるもの”は、食べ物だけではありません。
先日、副院長の里奈先生が、園医を務めている千代田区立九段幼稚園の「よい歯の表彰式」に出席し、園児たちに数分間の保健指導を行ってきました。
毎年この時期に行う恒例の行事ですが、今回はいつもと少し違うアプローチを試みました。
歯みがきのテクニックではなく、「なぜむし歯になるのか?」という“考える入り口”から、子どもたちに問いかけてみたのです。
「むしばいきんが好きなものって、なにかな?」
すると、子どもたちの手がいっせいに挙がりました。
「クッキー!」「チョコレート!」「ペロペロキャンディー!」
次々とお菓子の名前が飛び交い、微笑ましくも頼もしい反応が返ってきました。
そこで里奈先生が、もう一歩踏み込んで問いかけます。
「食べ物だけかな? 甘い飲み物とかも、むし歯になっちゃうんだけど、飲んでいる子いない?」
会場が一瞬静まり……やがて、前に座っていた園児がぽつりと答えました。
「…ミックスジュース、飲んでます。」
すると、隣の子も続きます。「はい、カルピス。」
――まさに、これこそが今回のテーマです。
“飲み物”は、むし歯の原因として見落とされがちなのです。
食べ物についてはある程度の知識を持ち始めている子どもたちも、飲み物に関しては、実は大人ですら無自覚なことが少なくありません。これは、私たち歯科医にとっても非常に重要な観点です。
実際、当院に通ってくれている小学生の男の子に「普段、何を飲んでいるの?」と聞いたことがあります。
彼はこう答えました。
「水か、お茶です。」
少し意地悪かなと思いながら「ジュースは飲まないの?」と聞いてみると、
「たまに、外にごはんを食べに行ったときとか、お誕生日のときにだけです。」
……完璧です。
これこそ理想的なジュースとの付き合い方。見本にしてクリニックの受付に飾りたいほどの回答でした。
当然、この子の歯には、むし歯は一本もありません。
子どもたちが「お菓子=むし歯のもと」と理解し始めているのは、とても心強いことです。
しかし、そこに「飲み物」の視点が加わっていないとしたら――それはじつにもったいない。
飲み物は、食べ物以上に“習慣性”のあるものです。
水やお茶を無意識に手に取るか、砂糖入りの飲み物を日常的に摂っているか。
この“無意識の選択”が、歯の健康に与える影響は非常に大きいのです。
ジュースやスポーツドリンク、乳酸菌飲料など、甘くて飲みやすい飲み物には、多くの場合「糖分」と「酸」が含まれています。
この組み合わせが、実は歯にとって最も注意すべき“ダブルパンチ”なのです。
糖分は、むし歯の原因菌が酸をつくるエサとなります。
この酸によって歯の表面からミネラルが溶け出す「脱灰」が起こり、唾液による修復(再石灰化)が追いつかなくなると、**むし歯(う蝕)**が進行します。
さらに、飲み物自体がもともと強い酸性(pHが低い)であれば、菌を介さずとも、酸蝕症として歯の表面が直接ダメージを受けることになります。
つまり、「糖入りで酸性の飲み物」を日常的に飲むことは、
むし歯と酸蝕症、両方のリスクを同時に高めてしまうということです。
“味や飲みやすさ”だけで選んでいると、知らないうちに歯を傷める習慣になっているかもしれません。
日々の小さな選択が、将来の歯の健康に大きな差を生む――
この視点を、ぜひご家庭でも共有していただければと思います。
一方、水やお茶は、糖分や酸を含まないため、口の中を酸性に傾けることがなく、唾液による自浄作用や再石灰化を妨げません。
**歯にとって、最も安心して飲める“習慣的飲み物”**といえるでしょう。
口に入れるものを「食べ物」だけでなく、「飲み物」まで意識できるようになれば、
むし歯予防の実践レベルは、ぐっと上がっていきます。
これからは「習慣的飲料研究所」というカテゴリの中で、
毎日の飲み物が歯にどんな影響を与えるのか、少しずつテーマを広げながらお話ししていく予定です。
ふだん何気なく口にしている“飲みもの”を、
あらためて見直すきっかけになればうれしいです。
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※一般歯科と矯正歯科で開院日・診療時間が異なります。
※土曜診療は月3回(不定期)の頻度にて診療いたします。
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