「悪くなる前に歯科に行く」という考え方が、少しずつ社会の中に根づき始めているように感じます。
この変化はとても前向きで、歯科医療に携わる一人として心強く思います。
だからこそ今、私たち歯科医療者自身も、う蝕や歯周病という病気の“診かた”を、もう一度見直してみる時期に来ているのかもしれません。
たとえば、糖質のコントロールや生活習慣の改善、毎日の歯みがきといった取り組みは、
“予防”というよりも、むしろ疾患に対する大切な「治療の一部」だと考えています。
それは単に“何かを追加する”のではなく、“診る目の向け方を変える”ことに近いのではないでしょうか。
日々の診療を振り返る中で、口腔内のトラブルを大きく次の3つの視点から整理すると、診療の優先順位やアプローチが見えやすくなるように感じています。
う蝕
歯周病
力のコントロール(咬合、歯ぎしり、くいしばり等)
これらはすべて、細菌や力の影響に加えて、日々の習慣や環境の積み重ねによって進行する「生活習慣病的な性質」を持つ疾患です。
だからこそ、単に処置を行うだけでなく、生活背景やセルフケアの習慣にも目を向けながら、
患者さんとともに歩むような診療の姿勢が求めらると感じています。
歯周病については、日本の歯科大学でも独立した講座が設けられており、体系的に学ぶ機会が比較的整っています。
「力のコントロール」も、補綴学や矯正歯科学のなかで、それぞれの観点から触れられることが多いように思います。
一方で、う蝕に関しては、保存修復学や予防歯科、小児歯科など複数の領域にまたがって扱われるためか、
「う蝕をどう理解し、どう予防・管理するか」を生態学的視点から体系的に学ぶ機会は、あまり多くなかった印象があります。
(これは私自身の学生時代をふり返っての実感でもあります)
一例として、欧米、特に北欧諸国では「カリオロジー(Cariology)」という分野が明確に確立されており、
う蝕のリスク評価やバイオフィルムの理解、非侵襲的管理に基づいた教育が行われていると聞いています。
そうした教育環境と比べると、日本ではこの領域の体系的な学びがやや限られているのではないかと
日々の診療の中でも感じることがあります。
この傾向は、歯科衛生士教育にも共通しているのかもしれません。
限られた教育期間の中で国家試験に備え、現場ですぐに必要とされるスケーリングやPMTCの技術に重点を置くカリキュラムは、非常に実践的です。
ただその一方で、う蝕のリスク評価や、日々の食習慣との関係、TBI(ブラッシング指導)の意味といった視点は、
現場に出てから徐々に身につけていくことが多いようにも感じます。
私のクリニックでは、そうした背景をふまえ、診療のなかでカリオロジー的な視点を自然に育てていけるよう、
スタッフとともに対話を重ね、日々の学びの機会を大切にしています。
日本ではフッ化物の普及や保健指導の浸透により、子どものう蝕は減少しています。
臨床でも、初期う蝕の段階でとどまっているケースが増えているという印象を受けることがあります。
しかし一方で、「もう虫歯の心配はいらない」とは、言い切れません。
加工食品や甘味飲料、栄養補助食品といった口腔を酸性に傾けやすいものが、ごく自然に生活に入り込み、
“ヘルシー”“低糖質”と表示されていても、実際には糖質を含む商品も少なくありません。
さらに、生活リズムの乱れやストレス、口腔乾燥といった要因が重なることで、
それまで虫歯が少なかった方でも、ある時期から急にリスクが高まることもあります。
う蝕という病気は、見た目や過去の経験だけでは判断できない、
静かで変化しやすいものなのだと、あらためて実感することがあります。
「予防歯科」という言葉は社会に広く浸透しつつあり、
歯科医院を“悪くなる前に訪れる場所”として捉える方も増えてきました。
そうした前向きな意識が広がってきた今だからこそ、あらためて考えてみたいのです。
糖質のコントロールも、毎日のブラッシングも、
う蝕や歯周病という疾患に対する立派な“治療行為”のひとつだと考えています。
日々の診療の中でリスクに気づき、患者さんと一緒に生活を少しずつ見直していく。
その積み重ねが、結果的に病気の進行を止め、歯を守ることにつながる――
そうした姿勢こそが、これからの歯科医療の柱になっていくのではないかと思います。
カリオロジーという学問は、その視点を取り戻すための、ひとつのきっかけになるように感じています。
私自身も、診療の中でこうした視点を丁寧に育てていけるよう、これからも模索を続けていきたいと思っています。
一番町矯正歯科 DENTAL CLINICNew Article
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※一般歯科と矯正歯科で開院日・診療時間が異なります。
※土曜診療は月3回(不定期)の頻度にて診療いたします。
※月・火は応相談です。
※学会・出張等で臨時休診の場合があります。
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麹町駅 東京メトロ有楽町線 3番出口 徒歩2分
半蔵門駅 東京メトロ半蔵門線 5番出口 徒歩3分(エレベーターあり)
市ヶ谷駅 JR総武線、東京メトロ有楽町線・都営新宿線
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※駐車場はありませんのであらかじめご了承ください。
※保険診療の施設基準についてはこちら
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